今回が本欄の最終回。最後に評者が15年前に著した本の紹介をさせて頂きたい。本と言っても書き込み式ドリルであり、とうの昔に絶版になっているのだが。
本書は評者が40代後半に出版されたが、30代前半に書いて自費出版した『小論文発想法』がベースになっている。30代の評者は、旧・富山女子高校で狂ったように小論文指導に打ち込んでいた。その中で、2つのオリジナルを生み出した。
その1つが、「小論文に必要な4つの力」という概念である。この4つの力とは、「知識力=出題テーマに関する知識力。これが不足すると手も足も出ない。発想力=論旨の発想力。『言いたいこと』のアイデアを生み出す力。構成力=文章全体の組立の構成力。意見をスムーズに伝えるための力。国語力=正しい文章を書く力。文章力、漢字力、原稿用紙への表記力など」(4頁)である。さらにこの4つの力を、1軒の家を建てるための要素にたとえ、「知識力=良質の木材などの材料。発想力=独創的な設計図を生み出すアイデア。構成力=そのアイデアをきちんと設計図に描く力。国語力=立派な家を建てるための大工さんの技術力」(4頁)とした。この考えは、今も変わってはいない。
オリジナルのもう1つは、「小論文には独創的な発想力が最も大切。その発想力をきたえるためには、8つのキーワードと9つの発想基礎パターンがある」と「発見」したことである。「8つのキーワード」とは、「①社会批判、②提言、③大局観、④関係、⑤ディベート、⑥あれかこれか、⑦ダイナミック、⑧イマジネーション」である。「9つの発想基礎パターン」とは、「①『これでいいのか!』発想法、②『ベクトル』発想法、③『なぜなぜ』発想法、④『それからどうなる?』発想法、⑤『一人ディベート』発想法、⑥『副作用はなに?』発想法、⑦『打ちこわし』発想法、⑧『夢と現実』発想法、⑨『もしも自分なら…』発想法」である。いやいや、これだけでは一体何のことか分からないだろう。詳しくは、もし可能であれば、本書を読んで頂きたい。
評者は若き日に、「良い小論文を書くには発想力が最も重要だ。しかし、これまで小論文の本で発想力を扱ったものはない。発想法を分析し、パターン化すれば、必ずや誰でも発想力を身につけることが可能なはずだ」と気づいた。素晴らしい発想力とは「天才」の独自の能力と謂われるが、たとえ「凡才」であっても発想パターンを学ぶことで素晴らしい発想力を得ることが可能だーと信じたのだ。
今改めて読んでみると、本書には、改善点や不足点が多い。しかし、「素晴らしい発想力の要素を解明、分析し、誰にでも開かれたモノにしたい」という願いは、読者に一定のところ伝わっているように感じる。お恥ずかしい内容ではあるが、本書は、評者の若き日の狂気が詰まった思い出の書である。
〈評・高木 哲也〉 数研出版・2003年・400円+税 (18年3月15日)