本書は16年10月から17年8月まで、「しんぶん赤旗」に掲載された「シリーズ 部活って何」をまとめたもの。「部活動はいま、曲がり角にあります。(中略)“制度疲労”を起こしているといってもいい。それらをどう修復し、あるべき姿を模索していくのか。一番の力は社会的な議論です。当事者だけでなく、多くの人々が認識を深めることが、その近道になることは間違いありません」(4~5頁)という冒頭の提起に同感だ。部活動問題は、もはや学校だけで解決できない状況になっている。
休養日問題では、「▽中学校で週2日以上の休養日を設定▽土日に実施する場合でも3~4時間程度以内で練習を終えることとするー。今から20年前、文部科学省がまだ文部省だったころ、運動部活動の行き過ぎに対して、すでにこんな提案をしていました」(40頁)と振り返る。しかし、実際は、なかなか休めない。その実態を、野球部の顧問をしているベテラン中学校教員は、「土日は大会が入ります。強くなればなるほど、他校から練習試合を申し込まれることも増え、「『せっかく申し込んでくれたから』とか『もう次から呼ばれなくなるんじゃないか』とか考えてしまって、断りにくいんです」。出場する大会を減らしたいと思っても「出る資格があるのになぜ出ないのか」と保護者から苦情がくることも。土日は休みにくいのが現実です」(14頁)と語る。休養日設定の困難の背景には、周囲や保護者からの要請もあるのだ。
このような中で多忙化が進む。全教・小畑書記長は、「教職員の働き方からいえば、勤務時間外の活動が当たり前になっていて、しかも全員が顧問になるよう強制されるのは問題です。まずは、勤務時間内に収まる活動にするという考え方が大事です。(中略)その上で、公立学校の教職員の給与に関する特別措置法(給特法)を改正して、やむを得ず勤務時間を超える場合は、労働基準法に沿って時間外手当を支払う、というようなしくみが必要です」(92頁)と語る。正論である。
本書は最後に、「何よりはっきりしているのは、「子どもにとっての『部活って何』」を柱にしなければ解決の糸口は見えないこと。また、小手先の改善ではなく「学校って何?」まで思いを巡らせることが実は一番の近道であり、子どもも教職員も幸せになれる道だということでした」(172頁)と述べる。自主・自由は部活動の要だが、学校全体での教育活動の要でもある。部活動問題の解決には、本来の学校のあり方、社会のあり方を深く考える必要性を感じた。
〈評・高木 哲也〉新日本出版社・2017年・1500円+税(18年3月1日)