8月9日、10日の両日、呉羽ハイツに於いて恒例の富山高教組・夏季学習会が開催されました。
両日とも、講演会と参加者による分散会がおこなわれ、多くの重要な学びを深めました。
初日は憲法漫談!
浪速のコバヤシさん
初日の9日午後は「津々浦々に平和な笑いを」と題して、大阪の笑工房代表・小林康二さんの講演を聴きました。小林さんは、黄色のハデなブレザーにエンジ色の山高帽で登場。「私の話は憲法漫談です!」という小林さんの第一声に会場は大盛り上がり。更に「ワシはヨシモトの笑いが嫌いヤ!」と語る小林さん。その理由は、ヨシモトの笑いは、弱い者をいじめて笑いをとるからとのこと。既に、ここに人権尊重の精神が表れています。
「芸人の75%は年収が50万円以下だ」との話では会場は唖然としました。華やかな芸能界の裏側の厳しい労働環境が述べられました。一方、「華やか」な業界の一つがプロ野球です。プロに留まる限り最低年俸は440万円はあるとのこと。これは、お笑いの世界の人々が「一人親方」であるのに対し、プロ野球選手は選手会という「労働組合」に団結しているからだと小林さんは語ります。10年ほど前のプロ野球選手会のストライキを例に「労働組合の大切さ」を小林さんは説きました。
そして憲法の本質とは「国家の暴走を止めるもの。それは、立憲主義だ」と語りは続きます。「国家よりも、会社よりも、まず、人は個人として尊重されることを憲法は保障している。ところが、現政権は改憲でこれを否定しようとしている」と憲法談義は続きます。
「権利は闘わなければ自分のものにならない。だから憲法は労働三権を認めている」、「改憲派が強調する『公益』、『公の秩序』と、現憲法が定める『公共の福祉』は違う。『公』とは『御上、国』であり、『公共の福祉』とは『みんなの幸せ』なのだ」等の小林さんの言葉は大切です。最後に「いまの社会は、若者が希望を持てない社会だ。それを改善しよう」との訴えがなされました。
一日目の講演への参加者の感想
現在争点にある憲法改正の問題で、九条しか頭になかった私にとって、様々な権利が失われる危険性を認識することができ、非常に勉強になりました。また、若者たちが使い捨てのような労働環境に直面している問題の現状を認識しました。
分散会では、各校の現状を聞き、我々でできる仕事を減らす方法を考えることと、人を増やすための訴えを続けることの重要性を感じました。
本日は短い時間でしたが大変勉強になりました。
憲法について、考えるべき、注意すべき点がかなり明確になったように思えます。また、憲法について、組合について、いくつも知らずにいた事柄があり、その事をあらためて知らされたと思います。
公務員である我々は、組合活動を一部制限されています。このことが、やや組合というものに対してあいまいな意識でいる元となっているように思えるのですが、あらためて組合の大切さについて考えさせられました。
小林先生の軽妙な語り口で楽しく聞かせていただきました。一方で労働人口の減少など悪循環が解消されない限り暗い未来しかないのかと考えさせられました。
分散会では、各学校の問題点などを話しあうことができました。
公務員バッシングの中で給料は下げられ、仕事は増えマンパワー不足の現状があります。多忙化と長時間労働が常態化しており、学校間競争が激化しています。でも、ゆとりある教育を行いたいという気持ちがあるのも事実です。
キャリア教育を変えよう!児美川さん、理路整然と
さて二日目の10日午前の講演者は法政大学キャリアデザイン学部教授の児美川孝一郎さん。前日の、小林さんの「若者に希望を!」との語りを受けたかのように、真に若者が希望を持つことに繋がるキャリア教育のあり方を語られました。
小林さんの熱血調の語りに対して、児美川さんは冷静で理路整然とした語り口で現在のキャリア教育の問題点を批判しました。
まずは現在の高校生の現状分析から。児美川さんは「学びに向 かわなくなっている」、「授業の理解度は非常に低い」、「大学にさえ入れば社会で活躍できるように何とかしてもらえると考えている」の3点を示し、高校生の学びの衰退と社会認識の欠如を指摘。特に「大卒の3割は正社員になれない」という現状を詳しいデータで示しました。
そして、文科省が現在推進するキャリア教育とは「いわゆる『勝ち組』である正社員のためのキャリア教育」にすぎず、社会構造が多くの非正社員を生み出しているいま、「非正社員のためのキャリア教育も必要である」と訴えました。
また、現在の学校に求められるキャリア教育を、「組織によるキャリア開発」ではなく「個人による自律的なキャリア開発」と規定し、学校の役割を「知識・技能のためこみ(=銀行型)」ではなく「学び方を学ぶ(=料理教室型)」であるとも規定。更に、「自分はどんな仕事に向いているか」という自己理解から始まる現在のキャリア教育の限界を説き、「やりたいこと・やれること・やるべきこと」を考える中で将来設計を行う必要性を説きました。
また、秩序に無条件に従うのではなく、「変だ!」という感覚を高校生のうちから磨く必要性も語られました。詳しくは児美川さんの近著『キャリア教育のウソ』(ちくまプリマー新書)を読んで下さい。学びを広めましょう
このような二人の貴重な講演を聴くとともに、参加者は分散会で自分の体験や想いを語り合いました。ときに学校を離れ、より広い場での学びの必要性を実感する2日間でした。この学習会での学びを職場にも広めましょう。
二日目の講演への参加者の感想
本日の講演を聞き、生徒と、または保護者と、生徒の将来について話す際の姿勢を考えさせられました。私自身、大学の学部は、その当時の自分の教科の好き嫌いで決めた部分が大きかったため、その行動の危険性をあらためて感じました。今の生徒たちに、社会の現状・学部の知識などを伝えたいです。
そして、これだけは自分の中で大切にしていきたいという「キャリア・アンカー」を中心に、将来を決めてもらいたいと思いました。
「組合に入っていることで、いろいろな意見・考えに接することができる」
この原則を改めて確認することができた会合でした。
二日目の児美川先生の講演では生徒の人間的な自立心や成長力が、学校行事の中で育まれることを認識することができました。
高校生・大学生をとりまく現状を知ることができ、大変良かったと思いました。生徒(特に進学校)はあまり現実を知らないまま、安易に進路先を考える場面が多く、教師側がしっかりと伝えていく必要性を感じました。
どうしても進学校では、能力(働くための)を重視せず、結果(進学率)を重視してしまうので、教師側も生徒の能力を伸ばすことをおろそかにしがちであることは、問題だと思います。
進路指導部に所属している私としては、現状が抱える問題点をいろいろ指摘していただいて、とても勉強になりました。生徒が卒業後社会に出て初めて知る世の中について、機会をとらえて知らせていく必要を強く感じました。学校の体制を変える難しさは、これからも持ち続ける課題だと思います。我々ももっと勉強すべきだと思います。