書記長日記

やはり森達也はおもしろい

こんにちは、TKDです。

今日、富高教情報の9月10日号が1日遅れでできあがりました。今日のうちに発送しましたが、職場の皆さんのお手元に届くのは、3連休明けかもしれません。楽しみにしておられる方も多いコラム「春夏秋冬」ですが、今回はHP内のブログ「副委員長のお薦め本」で紹介されている雑誌『教育』の記事について書かれています。その中で「同調圧力」という言葉が使われていたので、どきっとしました。昨日まで読んでいた本にも、この言葉が愛国のア強調されていたのです(ちなみに、このブログでも黒のスーツを話題に「同調圧力」について触れました)。

 

 

その本は森達也さんの『アは「愛国」のア」(潮出版社)。帯には、「売国奴VSネトウヨ 大激論勃発!」と扇情的な惹句が。森さんが、5人の若者を3回にわけて話し合った内容をまとめた本です。5人は、創価学会信者の編集者、ネトウヨ系の言説を信じる会社員、大学で森さんのゼミにいる学生2人、思想的には若干右寄りで冷静な議論ができる契約社員です。会社員の発言が見事にネット上ではびこっている言説をそのまま話すので、こんな典型的な人がいるんだと感心させられます。例えば…

申し訳ないけど、新聞やテレビといった「マスゴミ」は、本当のことを伝えないじゃないですか。朝日新聞は、従軍慰安婦をはじめ、反日的な記事しか載せない。どこの国の新聞なのかと思います。テレビはもっとひどい。在日系企業である電通がテレビを牛耳っている以上、どうしたって韓国や中国寄りになる。フジテレビなんか、特に韓国ゴリ押しぶりがひどい。そういう意味では、若者が新聞やテレビから離れたのは、真実を伝えなかった自分たちの責任なんですよ。

とか。もろ、ネットで語られていること、そのままです。この話し合いはフィクションかと思いましたが、読み進めていくと、やはり実在の人物のようです。この人の発言に森さんがどうからむかが見物です。おもしろいのは、森さんと会社員は完全に相反する考え方をしているのですが、ちゃんと6人で話し合いが進んでいくこと。この会社員が途中でふてくされて出ていくんじゃないかと重いながら読んでいましたが、最後まで参加していました。年齢の違いと森さんのキャラと司会のうまさが理由かもしれません。

 

 

話されるテーマは、領土問題、従軍慰安婦、集団的自衛権、靖国参拝、捕鯨、死刑制度、原発、宗教と盛りだくさん。森さんの話からは、いろいろなことを学ばされます。たとえば、ネットの匿名掲示板は東アジアで大きな影響力を持っているが欧米ではそんなに読んだり書き込んだりする人がいないとか、戦争についてのメモリアルデーは日本では終戦記念日と原爆投下の日だがドイツではアウシュビッツが解放された日とナチス内閣が誕生した日だとか(ドイツは加害に向き合っている)、死刑囚は刑務所ではなく拘置所にいることだとか(刑務所に入れると、死刑の他に懲役刑も科すことになるから二重の刑罰になってしまう)、クジラは消費が落ち込んで5000トン近い鯨肉が冷凍庫に備蓄されているとか。

さて、「同調圧力」ですが、森さんは日本は他の国よりほんの少し同調圧力が強い、その分個が弱い、集団に従属する力が強い、と言います。そして、ネット社会の中でその特徴がより表れやすくなっていると言います。また、ネットでは何度か同じ傾向を検索すると、同じような系統の動画や商品などがお薦めとして配信される、開かれた世界のはずがどんどん閉じていく、世界が狭くなっていく、と言うことも指摘します。やはり、森達也はおもしろいです。目が離せません。1年前に発行された『「自分の子供が殺されても同じことが言えるのか」と叫ぶ人に訊きたい』(ダイヤモンド社)もお薦めです。

ところで今日、朝日新聞の社長が謝罪会見を行いました。前に書いたように、福島第1原発の故・吉田所長の証言に関する「9割が命令に反して撤退」という報道が間違いだったということが致命傷になったようです。報道ステーションはこのことも含めて、従軍慰安婦問題の検証を行いました。なかなか見応えがありました。具体的な感想は次回の書き込みで。

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