書記長日記

貧困・格差と戦争

6月4日の本欄で「現在の貧困と格差の問題が、青年たちの中に『軍隊にでも入るしかない』という雰囲気を生み出している」という、オルグでの発言の一部を紹介した。貧困・格差問題と戦争の関係を考える時、私は、次の論文を思い出す。

それは、赤木智弘「「丸山眞男」をひっぱたきたいー三一歳フリーター。希望は、戦争。」(『論座』2007年1月号掲載)だ。この論文は、発表された当時は話題になり、『論座』は一時、盛り返したかの感があった(しかし、その後、廃刊)。

赤木論文の要旨は以下の通り。

「バブルがはじけた以降の『ポストバブル世代』は悲惨だ。私たち若者には仕事がなく、社会は若者に何の救いの手も差し出さない。このような不平等が続くのであれば、 いっそ、戦争を望んでしまう。戦争は悲惨だが、それは『持つ者が何かを失う』から悲惨なのであって、『何も持っていない』若者にとっては悲惨などではなく、むしろチャンスだ。社会が若者に、弱者たる不平等を強制しつづけるのであれば、私は『国民全員が苦しみつづける平等』を望んでしまう」。

赤木の本本論文は、その後、赤木智弘『若者を見殺しにする国』(朝日文庫、2011年、720円+税)に掲載され、この論文ができるまでの経緯や、その後の「識者」たちの反応も併せて書かれている。

詳しくは、この本を読んでいただきたいのだが、赤木は「戦争を希望する」とは言っていない。「このままだと、貧困と格差に苦しむ若者は、戦争に征くしかないーと考えてしまう。だから、このような社会構造を変えよ」と主張しているのだ。しかし、また、「貧困と格差」はそれに苦しむ若者たちを「戦争」にまで駆り立ててしまう危険性を孕んでいるーと赤木は示唆している。

ここで、現在、安倍政権が取り組んでいる「戦争法制」と、この国に蔓延する「貧困と格差問題」が結びつく。「どうせ満足に生きてはいけないのだから、いっそ、戦争を」という若者たちの考えを解消するためには、まず第一に、この国の「貧困と格差問題」の解消に努めるべきである。若者たちを無碍に戦場に征かせてはならぬ。そのためには、現政権に対して大きな声をあげなくてはならない。それが、私たち大人の急務であろう。

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