ある会合で聞いた話。
他県のある小学校の校長が、集会で子どもたちに「憲法よりも礼儀が大切です!」と述べて、教職員の総スカンを喰ったとのこと。その校長は気に病んで、その後、病休に入ったそうだ。
話しの意図はどうあろうとも、この時期にこのような話しを集会で行えば、教職員がどう反応するかは、一定、事前に分かるはず。その意味では愚かである。
ただ、「憲法」と「礼儀」は同レベルで比較できるモノだろうか。私は、「ジャンルが違う」と思う。
30年以上も昔、村松友視が『私、プロレスの見方です』でデビューしたが、彼はこの本で、「プロレスと他のスポーツは、ジャンルが違うのだ」という一点を強調した。ボクシングは「真剣勝負」というジャンルのスポーツであり、プロレスは「ショー」というジャンルのスポーツだ。それを、「スポーツ」という大きなジャンルで同一視して「ボクシングは真面目なのにプロレスは八百長だ」などの理由でプロレスを軽視することは間違っているーという趣旨を彼は本書で述べていたように思う。
この意味で、先の校長が、「礼儀」の大切さを述べようとして、比較の対象として「憲法」を挙げたのは軽率である。どちらも異なったジャンルにおいて、極めて大切なモノだと思うからだ。
思えば、この世の「識者」の発言でも、ジャンルを混同して比較した発言が多いのではなかろうか。私は、「同じジャンルの中での優劣」はあっても、異なるジャンルのモノ同士の優劣を言うのはおかしいと思う。だが、よく混同するのも事実。己の発言にも気をつけなくてはならぬと自戒したお話であった。