書記長日記

みんなの学校

こんにちは、TKDです。

今日は、富高教情報の4月25日号が職場に発送されました(遅くなってすみません)。1面下の副委員長のコラム「春夏秋冬」で、先日紹介した映画『ひまわり』のことが書かれています。すばらしいです。副委員長渾身の作です。言葉とはこんなに力があるんだ、と思わされます(副委員長の言葉にはたびたびこのことを感じます)。ぜひ読んでください。そして、6月22日(日・明治安田生命ホール)23日(ラポール)の上映会に足を運んでください。

ネットでは「美味しんぼ」が叩かれているようです。福島に行った主人公が鼻血を出したり、疲れやすくなったり描かれていることを、風評被害を招くと言っているのです。でも、作者は現地での取材に基づいて描いています。鼻血も疲れやすさも、原発事故以降伝えられていたことです(もちろん原発との因果関係は証明できませんが)。逆に、何ともない人もいます。個人差と言えるかもしれません。鼻血が出たと言われても、けっして驚くことではないし、風評被害とも思いません。今も福島の人々が高い放射線量の下で暮らしていることは事実です(県境で放射線が食い止められるわけではないので、福島とは限りませんが)。この後、どういうことが起こるかは予断を許しません。ただ、大事なことは、そこで暮らさざるを得ない人たちのつらさに思いをはせることだと思います。一方で、危険性があるならそれについて訴えることは、たとえそこに暮らす人々をその時は傷つけたとしても、言わなければいけないことだと思います。

さて、毎月楽しみにしている朝日新聞の論壇時評。4月の見出しは「ブラック化するこの国」。高樋源一郎が取り上げた文章は、POSSE・22号での座談会「ブラックバイトとは?」、『現代思想』4月号の特集「ブラック化する教育」Journalism4月号(特集は「教育はどこへ行くのか?」)の中の「教育を市場化した新自由主義改革 崩壊するアメリカ公教育の現場から」です。POSSEは以前に東journalism京で買って読んでいたのですが、残りの2冊も読みたくて、紀伊國屋で『現代思想』を買い、土日の東京出張の行きの電車の中で読み、八重洲ブックセンターでJournalismを買って帰りの電車の中で読みました。POSSEも含めどれもおもしろかったです。ただ、『現代思想』は活字が小さすぎます。眼鏡を外して近づかないと読めません。もっと活字を大きくしないと高齢の人は読むのを諦めるかも。まあ、老眼鏡をかければいいんですけどね。その中で、Journalismの中の記事を1つ紹介します。関西テレビの記者・真鍋俊永さんが書いている「多様なふれあいがみんなの成長に 橋下市政の足元で見つめる教育改革」という記事です。

彼がディレクターとして制作したドキュメンタリー『みんなの学校』は、大阪市内の大空小学校で1年間かけて教職員と子どもたち、保護者や地域の人々の営みを追った作品です。記事では、当時4年生だった「セイちゃん」という男の子の話が出てきます。「全く学校にいられない子」という噂とともに転校してきた子です。そのセイちゃんが6月には自分の席で1日を過ごせるようになります。なぜか? セイちゃんのお母さんの言葉です。

「セイが初めての場所に行ったときに、突然大きな声を出したり、手を挙げて質問したりすると、いつも周りの子たちからは『誰この子? 何この子?』という奇異な目で見られます。でも、大空の子たちは、最初の見学の日から『へえ、そうなんや』とか『セイちゃんはそんなふうに考えるんや』って、パッと受け入れてくれたんです」

では、なぜ大空小の子たちはセイちゃんを受け入れられたのか? その鍵は開校1年目にさかのぼります。6年生に転校してきた、余り言葉をしゃべらず、しょっちゅう学校から逃げ出す男の子と、つきっきりで世話をする1年目の女性教師。彼は夜中まで行方がわからなくなる時もありました。ある日、校長が教室を訪ねたとき、男の子が教室を飛び出し、女性教師は追いかけようとして廊下で足を滑らせ、大きな音を立てて倒れたそうです。

 「ああ、また夜中まで彼を待つのか……」。そう思いながら教室を出た校長が見たのは、「痛いねえ、痛いねえ」と話しかけながら、女性教師のお尻を一生懸命にさすっている彼の姿だった。驚きで声を出せなかった校長と一緒に、6年生全員がその光景を見つめていた。

 大空小学校の特別支援教育がうまくなったわけでも、支援の人数が増えたわけでもないのに、その日から彼が逃げ出すことはなくなったという。

 理由を尋ねた私に、校長は笑って言った。「周りが変わったからよ。『え? こんな子やったん、この子』と6年生みんなが感じて、その瞬間からみんなが彼を見る目を変えたから、彼は学校いられるようになった。だって彼はなにも変わらず、彼のままだったのだから……」

記者は取材を重ねる中で、橋下改革が求める「競争と管理」の対局にこの学校の教育があることに気づきます。ただ、作品の中では橋下改革について触れません。その必要がないからです。

すみません。一部分を紹介しただけです。ぜひ全文を読んでみてください。朝日新聞社から出ている雑誌です。ただ、紀伊國屋にもなかったから、富山では手に入らないかも。八重洲ブックセンターでは平積みしてあったのに。恐るべし、東京。

番組は昨年、数々の賞を受賞したそうです。ぜこの番組も見たいと思いました。再放送してくれないかなあ。

 

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