こんにちは、TKDです。
久しぶりの書き込みです。昨日は教組共闘のブロック会議のために名古屋に行ってきました。前回の名古屋行きでは、ブログでも「何やってんだか」と自嘲したように、しらさぎで行って失敗したので、今回は高速バスを使って行ってきました。どちらにしても移動時間は読書タイムです。
今回は3月に買ったまま放置していた『日本の奨学金はこれでいいのか!』(あけび書房)を読みました。もともと定時制高校の教員として、「貸与型の奨学金はローンと一緒だ。卒業時に生徒に借金を背負わすにはいけない」と考え、積極的には奨学金を薦めてきませんでした。また、新聞や雑誌で奨学金の返済に苦しむ若者の実態は目にしてきました。しかし、まとめて読むとずっしり重たいものです。衝撃を受けました。これは必読の本です。
最初に中京大学教授の大内裕和さんが、なぜ近年になって奨学金の返済に苦しむ若者が増えたのかを、順を追って説明します。無利子貸与中心から有利子貸与中心になったこと、返還免除制度の廃止、大学授業料の高騰、日本型雇用の崩壊と労働者の賃金の低下=世帯収入の減少、高卒求人の激減による大学への進学増、大卒求人も減少したことによる就職難と非正規雇用、など、経済的に苦しい家庭の子が大学に進学せざるを得ず、しかし卒業しても奨学金を返還する収入を得られないという、構造的な問題だということが分かります。
当然、滞納が増えますが、滞納すれば利息に加え10%という法外な延滞金が発生します。これに対して日本学生支援機構はサラ金まがいの強硬な取り立てをしています。最初に延滞金、続いて利子の返還に当てられるため、いつまで経っても元金が減りません。なぜ、こうなっているのか? それは有利子貸与の資金が金融機関から出ているからです。さらに取り立て業者への代金も延滞金から支払われます。つまり、日本学生支援機構が行っていることは、「奨学」ではなくビジネスの一環なのです。
次に、ジャーナリストの三宅勝久さんが、奨学金の返還をできない状態の人に機構が強引な取り立てを行っている実態をルポします。三宅さんは長くサラ金の問題を調査報道してきた人です。その三宅さんから見ても、機構の行う取り立ては頑なで容赦ないものです。
次に弁護士の岩重佳治さんが相談活動から見えてくる実態と提言を述べ、最後に座談会が行われます。
印象に残ったのは、奨学というからには家庭の経済力の差を補うことが目的のはずなのに、卒業後に大きな借金を抱えることで、奨学金を借りずに大学を卒業できた人と比べ、さらにハンディを背負うことです。やはり給付制でなければ奨学金とは呼べません。
また、他のローンであれば借り手の経済状況を調べて返済能力を確かめて貸すのに、奨学金はむしろ経済的に厳しい家の子に貸し、そして返済できないといって延滞金を課し、強硬な取り立てをするということです。これは筋が通りません。
このような状況を改善するためには国の教育予算を増やし、大学授業料を引き下げるか、給付型の(本当の意味での)奨学金を創設するか、その両方を行うかですが、とりあえず手をつけるべきこととして3人が共通して言うのは、延滞金の廃止です。
さて、この本を読み終えて、今の若い教員は大丈夫かと考えます。たぶん少なからぬ人が奨学金を借りており、昔のような返還免除はありませんから、今まさしく返還中のはずです。親元で暮らしておればまだいいのですが、そうでなければ大変です。組合費の引き下げ、特に若い人の部分の引き下げはやはり検討しなくてはいけないと感じました。