今春から、全国の小・中学校で『私たちの道徳』なる道徳副教材が使われ始めた。本書の「著者」は文部科学省。但し、個別の著者の名前は全く記載されていない。小学校の低・中・高学年用と中学生用の四種類があり、全国の1,000万人の小・中学生に無償配布された。かかった経費は9億8千万円。使用義務はないが、実質的に「国定」の道徳「教科書」の地位を得ており、一般の人も、書店で購入することができる。さて、早速、この本の「愛国心」部分を読んでみた。
さすがに、小学校1・2年用には記述がない。
小学校3・4年用では、「伝とうと文化を大切に」という項で「わたしたちの国には、昔から受けつがれてきた伝とうと文化があります」(164頁)と述べられる。
小学校5・6年用では、「郷土や国を愛する心を」という項で「この国を背負って立つのは私たち。私たちの住むふるさとには、伝統や文化が脈々と受けつがれている。それらを守り育てる使命が私たちにはある」(164頁)とある。
中学校用では、「国を愛し、伝統の継承と文化の創造を」という項で「日本には四季があり、美しい風土がある。先人たちは、これらに合った生活様式や文化、産業などを生み出し、我が国を発展させてきた。これらを受け継ぐとともに、日本人としての自覚をもって、この国を愛し、その一層の発展に努める態度を養っていきたい」(206頁)と述べられる。
先の『心のノート』と同様に、「ああ、またか~」という陳腐感を抱かせる記述だ。このように奇妙な「肩の力の入れよう」に、うさん臭さを感じることが出来る小・中学生に育って欲しいものである。
〈評・高木 哲也〉
★小学校3・4年用 教育出版・2014年・680円+税
★小学校5・6年用 廣済堂あかつき・2014年・667円+税
★中学校用 廣済堂あかつき・2014年・815円+税
(14年8月25日)