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同調圧力のなかでいまを生きる教師たち 川村 光 著

本紹介 教育 雑誌『教育』は本年9月号で「同調圧力と学校の自由」という特集を組んだ。本論文はこの特集の巻頭論文である。

 近年とみに学校は息苦しくなった。その大きな原因の一つが学校に蔓延る「同調圧力」だ。著者は、この「同調圧力」を二種類に分ける。まず、「上からの同調圧力」。これは、「個々の教師を組織人として規定する制度的要求のこと」(6頁)であり、「学校評価や主幹制度など、近年の教育政策による要求のこと」(同頁)である。一方、「内からの同調圧力」も存在する。これは、「個々の教師に対して同僚が足並みを揃えることを求めること」(同頁)だ。

 この二つの「同調圧力」の関係を著者は探る。先行する、公立小・中学校教員への質問紙調査研究を参考にした結果、「近年の教師集団については、「内からの同調圧力」が増加しており、また、その性質が「上からの同調圧力」に沿った組織的なものへと変化してきていることがうかがえる」(9頁)と分析される。

 また、この質問紙調査では意外なことも分かった。それは、多くの教員が多忙で疲労しているにもかかわらず「教師になってよかった」という満足度が高くなっているという事実である。この現象を著者は、「教師の教職に対する満足度の高さからわかるように、多くの教師は「上からの同調圧力」に対して何らかの違和感をもちつつも、あるいはそういったものをもたずに、徐々に組織の一員としての役割を受け入れるようになり、そのことにやりがいを感じるようになってきているようである」(11頁)と見る。

 完璧に管理された組織の中で、生徒の学力等の「データ」が上がることで満足する教師たちーそれでいいのか。教師とは、そのような職業ではなかった筈だ。

 〈評・高木 哲也〉

『教育』2014年9月号、かもがわ出版、667円+税   (14年9月10日)

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