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職場はなぜ壊れるのか 荒井 千暁 著

職場はなぜこわれるのか 「いま日本の労働社会で奇妙な現象が起きている。うつ病などを中心に、働きながら心の病になる人が着実に増えているのだ」(8頁)。本書が著されたのは7年半ほど前だが、現在もこの「奇妙な現象」は続いている。著者は、その大きな原因を、職場に蔓延する成果主義だと見る。そして、「成果主義に代表される人事考課制度をみる限り、弊害だけが目立つのです。どんな弊害かといえば、なにより倒れる人の増加でしょうし、それに伴う組織体の危うさです」(144頁)と述べる。この成果主義は、現在の私たちの学校職場にも蔓延し始めている。

 さて、成果主義を『ウィキペディア』は、「企業において、業務の成果のみによって評価し、それに至るまでの過程(プロセス)は無視して、報酬や人事を決定すること」と定義する。この「(成果)に至るまでの過程(プロセス)は無視」という部分が極めて危険だ。なぜならば、「私の仕事」とは、「私だけでは成し遂げることが不可能だ」という構造で出来上がっているものであり、「成果に至るまでのプロセス」が極めて重要だからだ。この辺りに関して著者は次のように述べる。「(私の)仕事の前後に控えているプロセスには、例外なく「人間たち」が介在しています。職場内の人間たちであり、職場外の人間たちです。こうした理解や実体感なくして、一人ひとりの役割分担だけを規定し評価しようとしても、うまくいくはずはありません。仕事に対する目標や役割は、流動的に働く周辺状況との交流から生まれるはずのものだからです。ありていにいえば自分だけ、あるいは自職場だけの目標なり役割に終始するという自己完結型・自己満足型の陥穽に陥っているーそれが成果主義の実像ではないでしょうか」(167頁)。

 成果主義は、労働の真の構造を見ようとしていない。そもそも、私は、「私だけ」で働くことは出来ないのだ。

 〈評・高木 哲也〉

ちくま新書・2007年・700円+税   (14年9月25日)

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