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労働時間の短縮は教育の根本条件ではないのか  佐藤 和夫 著

  センセイの時間 季刊『人間と教育』は本年秋号で「センセイの時間」という特集を組んだ。本論文はその巻頭論文だ。

 哲学を専攻し、千葉大学名誉教授である著者の結論は本論文のタイトル通りだ。「なぜ、労働組合は労働時間の短縮を第一の要求として掲げないのか」と訝(いぶか)る著者は、いま必要なことは「大幅賃上げ」以上に、長労働時間労働の是正であると断言する(23頁)。このようなストレートな提言は、組合運動に携わる者の一人として実に貴重だと感じる。私たちは、いつの間にか教育現場での長時間労働に「麻痺」してはいないか。

 さて、著者は長時間労働の原因を探る。そして、「現代の教員の多忙化の根底には、より多くの時間を学校で過ごしていればいるほど、あるいは、子どもに対して直接に学習の時間を課していればいるほど、子どもの教育に役立っているはずだという根深い考えが宿っていると思う」(27頁)と苦言を呈する。この苦言の是非を私たちはしっかりと検証し、「子どもたちに手をかけることの意味や意義」を、しっかりと考えるべきだろう。

 更に著者は、「子どもをいつも忙しい状態に置くのは、子どもに動物的な時間を過ごすことしか教えない。(中略)教員は、子どものために働きすぎることは子どもの学ぶ力を奪うことであり、生徒や学生のためにも十分に休みを取ることが不可欠だと深く心に刻まない限り、この長時間労働の泥沼から抜け出るのが難しい。教員の長時間労働は、子どもの教育にとって有害無益なのである」(28頁)と喝破する。著者はこの意見の根拠を、ハンナ・アーレントやバートランド・ラッセルなどの哲学者の言説を援用して示している。

 今こそ、私たちは時短の意義を真摯に考え、訴えなくてはならぬ。

 〈評・高木 哲也〉

『人間と教育』2014年秋号、旬報社、667円+税 (14年10月10日)

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