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大学入試問題の分析・批判2014年度  中部・東海ブロック大学入試検討委員会 著

大学入試問題の分析  本書は、「学力と大学入試をめぐる課題と提案」、「14年度センター試験問題の教科別分析・批判」、「14年度二次試験問題の教科別分析・批判」の3部から成る。二次試験問題の対象となった大学は金沢大学など18校。センター試験・二次試験の分析は誠に精緻であり、大学入試が近づく昨今、高校現場の教員にはその対策として極めて有効だ。しかし、本書の目的は「入試対策」などではない。本書の眼目は、第1部の「学力と大学入試をめぐる課題と提案」にある。ここに記された批判と提案こそが高校教育に携わる者にとって極めて貴重だ。以下に重要な部分を紹介したい。

 まず、本書は「高校生の学力低下とその背景」を分析し、高校生の「学ぶ力」の低下の原因を、「言語力の低下」・「知の量的不足と質的低下」・「知に立ち向かう姿勢の劣化」と規定する(5~6頁)。「知には広い裾野が必要だ」と訴える本分析には、単なる「受験知」の拡充などに留まらない本質的な「知への愛」が漲っている。

 さらに、「何が高校生の学びの質を左右しているか」の項では、センター試験の「backwash効果」を指摘し、「言語による論理的アウトプットを必要としないテストが合否を大きく左右しているのだから、言語による論理的アウトプットの訓練が高校時代に軽視されるようになるのは自明の理だ」(6頁)と述べる。続く「現在の大学入試の問題点」の章では、「センター試験は学習をトレーニングにすり替える」と指摘し、「他に何もしなくても、演習を繰り返すだけでセンター試験の得点力が上がることが、多くの高校現場で確かめられた」(7頁)と批判する。そして、「私たちの大学入試改革提案」において、「マークシート式のセンター試験は廃止する」(11頁)と提言する。

 「真の学力と何か」を真摯に訴える本書の態度こそが、本物の教育を生み出すだろう。

  〈評・高木 哲也〉

中部・東海ブロック大学入試検討委員会、2014年、非売品   (14年11月25日)

*本書は、富山高教組・書記局に在庫があります。

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