富山高教組のおすすめ

認知症に向き合うための必読書

「社会とともに歩む認知症の本」宮澤由美 著 (新日本出版社)

認知症の本 認知症患者の数は確実に増し、介護の問題に苦しむ人は少なくありません。職場の多忙化がすすむ中、誰にも相談できずにいるのが実情です。「認知症」という病気になった時、正しい知識を事前に理解していれば冷静に対応できます。どのように向き合えば良いのかについてこの本から学ぶことができます。

認知症になったらどうする?という観点で本書の一部を紹介します。

 

 

 

その1 認知症の症状とは? 

    次の4つの質問にあてはまるようなら認知症をかもしれません。

 ①同時にいつくかのことができますか?(遂行機能障害)
 ②お金の計算ができますか?     (計算障害)
 ③季節にあった服が着られていますか?(見当識障害)
 ④同じ物を何度も買っていませんか? (記憶障害)

その2 もしかしたら認知症なのでは?と感じたら・・

「もの忘れ外来」に行ってみる。

(公益社団法人)認知症の人と家族の会のHPを検索すると、各県の「物忘れ外来」として利用できる医療機関が示されています。富山県では16の医療機関の中にあり、受診すべき科は病院ごとで異なりで病院に相談されるといいでしょう。「治る認知症」と言われる病気もあります。症状がでたらできるだけ早期に受診するのが重要です。※早期発見で、早期治療が可能な病気もあります。

その3 認知症と診断された後の精神的フォローアップと各種相談のために

相談しやすいかかりつけ医や地域包括支援センターなどに相談してみる。地域包括支援センターでは、保健師、ケアマネージャー、社会福祉士が置かれ、介護保険認定で要支援と認定された人のケアプランをたてたり、「認知症予防教室」などの取り組みなども行っています。

その4 軽度の認知症の人におすすめ

「認知症カフェ」「ふれあい食事会」で仲間づくりをする。軽い認知症の人にお勧めなのが「認知症カフェ」です。同じ境遇の人と話をすることで共感が得られたり、病気に関する情報が得られるメリットはとても大きいです。1人暮らしであればなおさらで、定期的に外出して人と話す機会にもなります。

その5 認知症の家族との接し方

 「バリデーション」という手法は、高齢者に尊敬と共感をもって関わることを基本とし、尊厳を回復し、引きこもりに陥らないように援助するコミュニケーション法です。

次の例(綾香さんの仕事の例)がとても参考になります。

 夕方になると、決まって「家に帰らなきゃ」と言い出す人は珍しくなく、たいていの場合、「ここが家ですよ」「今日は息子さんは出張だから誰もいませんよ」などと言ってなだめるのがふつうです。しかし、「バリデーション」の技法でコミュニケーションをとると、「若い頃、共稼ぎしていて、常に職場を定時退勤することを申し訳なく思い、家に帰ってからは下校後に留守番させている小さな子どもを不憫に思う板挟みの生活」を送ってきて、常に時間になったら家にかえらなきゃ」という強迫観念のように思っていたことがわかり、綾香さんは、「小さい子どもを留守番させて働くのは大変でしたね」「夕方になると昔を思い出しますね」などその境遇に共感したことばで声かけをすることで、「家に帰らなくてもいい自分」に気が付き、その人は落ち着きを取り戻していったそうです。

「問題行動」とこれまで言われてきた症状も介護する側の発想であって、その人にはその人なりの個別の背景があります。関心を持って聞き、深層心理を少しでも理解し、深く共感することで精神的な落ち着きを取り戻せるということです。

<認知症の人とのコミュニケーション法>
「3つのない」
 ①驚かせない
 ②急がせない
 ③自尊心を傷つけない
「7つのポイント」
 ①まずはさりげなく、様子を見守る
 ②自然な笑顔で余裕を持って
 ③できるだけ一人で声かけを
 ④声をかけるときは、相手の視野に入ってから
 ⑤相手と目線を合わせてやさしい口調で
 ⑥おだやかにゆっくり、はっきりと
 ⑦せかさず、相手の言葉に耳を傾けて

その6 認知症の症状が進んだり、介護がより必要になった場合(1人暮らしができなくなったら)

 グループリビング、サービス付高齢者住宅、ケアハウス、有料老人ホーム、認知症高齢者グループホーム、老人保健施設などがありますがいずれも毎月10万円以上の費用がかかります。特別養護老人ホームは要介護3以上の人が対象で、一般的に国民年金で入れるのはここだけですが、ベッド数が足りず入所には何年も待たねばなりません。特養入所を待って、介護老人保健施設(それぞれ半年までの入所)を何か所も変わることも多く患者家族の負担になっています。行政は社会保障費を抑制し、病床削減・介護士不足・入所者への自己負担率増をすすめ、決して十分ではない在宅での介護を基本とするしくみを徹底させており、安心して介護ができる環境にはありません。

  そんな中、各地域にある『(公)認知症の人と家族の会』がその大きな役割を果たしています。富山県でも事務局長の勝田登志子さんを中心に、介護相談をはじめ、「つどい」と称した会員の集まりを行っています。ここでは、学習や情報交換、フリートークと「孤独にならずに、認知症を通じて人とつながる」ことを原点としています。認知症でも安心して暮らせる社会をめざして会誌の発行、全国研究集会の開催、介護保険制度、様々な時事問題に対する要望・提言活動、世界アルツハイマーデーなどの国際交流など多彩な活動を行っています。悩んでいる人はぜひ相談してみてください。

 

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