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『イタイイタイ病と教育』 向井 嘉之 編著

 発生が1911年頃と推定されるイタイイタイ病(19頁)の患者の存在が初めて明らかになったのは1955年(20頁)。発生から百年以上の時を経て、イタイイタイ病は「現在進行形」(8頁)である。

 イタイイタイ病教育を県内で初めて1971年に行った教員が戸口捨(志貴野中学、当時)。本書から、彼に続く先達を知った。個人では、沢田健寿(二上工業高校、当時)、石井義雄(大泉中学、当時)。団体では、富山商業高校ユネスコ友の会(資料収集・現地調査)、富山女子高校演劇部(顧問・窪邦雄原作『神の川』上演)だ。しかし、その後が途絶える。「誤解を恐れずに言えば、公害教育はこの30年余りの間、環境教育の前史としてすでに過去の教育に追いやられていたきらいがある」(76頁)と本書は記す。

 だが、2011年の東京電力福島第1原発事故以来、新たな動きが出た。本書では、亀澤政喜(富山北部)と武野有希子(新湊)の実践が紹介される。ともに素晴らしいのだが、ここでは亀澤の発言を取り上げたい。

 「イタイイタイ病は学びの宝庫である。(中略)イタイイタイ病学習は公害という負の遺産を学ぶことであるが、そこには多くの人の努力、勇気、知恵により社会が変わっていく希望の財産がある。その財産を丁寧に次の世代である子どもたちに伝えていく役目が筆者ら教師の責任である」(144頁)、「『苦しんでいる』『困っている』『悲しんでいる』人を思いやるやさしさや共感、あらゆる生命に対しての『やさしさの感覚』が環境・公害教育の根底にある。このやさしさの感覚が主権者としてのセンスにつながるとき、我々の社会がもっと人にやさしい、いのちにやさしい持続可能な社会に転換していくのではないだろうか」(157頁)。私はここに、亀澤の教員としてのセンスの素晴らしさと、人間としての強さとやさしさを観る。亀澤、武野の実践は、この国の主権者教育の大きな力となるだろう。

 〈評・高木 哲也〉能登印刷出版部、2017年、1600円+税 (17年7月14日)

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