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『軋む社会』 本田 由紀 著

 昨年ヒットしたテレビドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』第10話で、主人公の森山みくり(新垣結衣)が「やりがい搾取」という言葉を使い、反響を呼んだ。この言葉の出典が本書である。ドラマでは、商店街の人々にノーギャラで仕事を手伝って欲しいと依頼された主人公が、「人の善意につけ込んで労働力をただで使おうとする、それ搾取です!友達だから、知り合いだからといって正当な賃金を払わない『やりがい搾取』に断固として反対します!」と宣言した。

 この「やりがい搾取」の正しい標記は「〈やりがい〉の搾取」である(96頁他)。「〈やりがい〉の搾取」とは、働く者が自分の仕事に「やりがい」を見出し、対価も得ずに大いに働き、働かせる側に労働力を搾取される状況だ。本書では「彼ら(=働く者)は自発的に『自己実現』に邁進しているように見えて、じつは彼らをその方向に巧妙にいざなう仕組みが、働かせる側によって、仕事のなかに組み込まれているのである」(95~96頁)と述べられている。このような状況を社会学者の阿部真大は「自己実現系ワーカホリック」と呼ぶ(86頁)。しかし著者は「『自己実現系ワーカホリック』という言葉は、個人側の動機を強調しているように見えるため、不適切な面があるかもしれない。働かせる側の要因の重要性を言いあらわすために、ただしくは『〈やりがい〉の搾取』と呼ぶべきであろう」(96頁)と述べる。

 この「〈やりがい〉の搾取」は、正に学校での教員の労働に当てはまる。「生徒のため」「学校のため」という「やりがい」によって、多くの教員が時間外労働を厭わない。しかし、それでいいのだろうか。学校での「〈やりがい〉の搾取」状態を生み出す元凶は、教員を働かせる側の県や国なのだ。学校での働き方を「搾取なき、人間らしい働き方」に変革することが必要だと痛感した。

 〈評・高木 哲也〉双風舎・2008年・1800円+税 (17年9月15日)

 

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