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『崩壊するアメリカの公教育』  鈴木 大裕 著

 著者は16歳でアメリカの高校に留学し、スタンフォード大学大学院で教育学を学んだ。その後7年間、千葉市の公立中学で英語教員を務めた後、08年からは再びアメリカで教育学を研究している。

 「日本ではまだ新自由主義の本当の恐ろしさが知られていないのかもしれない」(14頁)という危機感と警告の必要性から本書は執筆された。本書で特に問題視されている教育制度は、アメリカに広まる市場型学校選択制である。レーガン政権以降この制度は続き、大企業が次々と公教育に参入した。この制度を著者は、「競争原理を軸にした市場型学校選択制は、教育を私有財として商品化し、学力テストの点数という極端に狭い価値観に閉じ込めることによって公教育における学校の序列化と教育格差の正当化を図る、競争による淘汰の精神に則った制度だ」(50頁)と批判する。

 さらに、「テストの点数=学力」という偏狭な学力観を著者は痛烈に批判する。「実際に数値化できる認知能力などは、学校教育の幅広い効果のうちの一部に過ぎない。(中略)(測定可能な能力のみで教育を評価すれば)学校はグローバル経済における即戦力を効率良く生産する工場、教育のプロであるはずの教育者たちは指示通りに動く労働者、教育はプログラム通りの結果を生み出す機械的な工程、若者たちは品質等級に分類された製品と化してしまうだろう」(98頁)という言葉は重い。

 また、安倍「教育再生」が打ち出すグローバル化教育の推進に対して、「日本には経済競争のためのグローバル・スタンダードに『合わせる』のではなく、それに対抗し得る新しい『成功』や『幸せ』の形を打ち出すことによって、グローバル・スタンダードに疑問を投げかける存在であって欲しい」(112頁)と提起する。本書は、公教育を真摯に考えるための好著である。

 〈評・高木 哲也〉岩波書店・2016年・1800円+税 (17年9月29日)

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