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「怒りを表現すること もう一つのキャリア教育」 乾 彰夫 著

 本論文は雑誌『教育』12月号の特集「『ブラック社会』に教育は…」に寄せられたもの。「キャリア教育」という言葉が政策文書に登場した1999年以来、教育現場ではキャリア教育が広まった。著者は、その「負の成果」を次のように述べる。「若者たちは相当に『無理ながんばり』を強いられていた。(中略)『やりたい仕事でなくてもきつい仕事でもとにかく正社員』『つらくても絶対に辞めるな』と彼らを『教育』し『励まし』てきたのは誰だったか。(中略)こうした異常な職場環境が蔓延しているにもかかわらず、そこでのがまんとがんばりだけを教えてきたキャリア教育の責任はいまだに問われていない」(8頁)。

 このような状況を改善するために、著者は若者たちに「怒りを社会に向ける学び」を勧める。「困難を『自分のせい』とさせないためには、ファーロングの議論を受けるなら、『だめな自分』に向けられていた『怒り』を正しく外に向けることが必要である。(中略)働き始めの若者たちには、困難の原因がどこにあるのかを容易に判断できない。(中略)自分が置かれている働き方・働かせられ方が正常か異常かを判断できる基準を若者たちがもてるために必要な第一のことは、当たり前のことではあるが労働基準法など、今日の日本社会で労働環境・条件の最低限の基準とされている規範や労働者が雇用者から不当な扱いを受けたときに自分たちの身を守るもととなる諸権利をきちんと知っておくこと。(中略)第二に、職場の内外に自分と同じような仕事で働く仲間とのつながりをもつことも重要である」(8~10頁)。

 そして著者は、「不当と感じられる扱いを受けたときには怒っていいということを私たちは若者にきちんと伝えるべきだ。そうした怒りを抑え込むことが、メンタルな困難と孤立へとつながる」(11頁)と続ける。

 正しい知識を基に、不条理に対しては「正しく」怒ることーこのような教育が、いま、キャリア教育に求められている。

〈評・高木 哲也〉『教育』2017年12月号所収、667円+税 (17年12月15日)

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