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『異色の教育長 社会力を構想する』 門脇 厚司 著

 著者は3年前の本県「県民におくる夕べ」の講演者。講演当時は茨城県美浦村の教育長を務めていた。本書は、筑波大学で教育学を教え、その後、筑波学院大学学長を務めた経験を持つ「異色の」教育長の教育論である。本書では、美浦村教育長時代の教育刷新政策や日本の教育政策批判が述べられ、実に痛快だが、ここでは本書最終部分に記された教員社会批判を紹介したい。

 著者は、現在の教員社会を「縛られ諦め従い満足する教員社会」(216頁)と規定する。そして、教員の特徴を、「生真面目な“普通の人”」(217頁)、「政治的発言を避ける」(223頁)、「服務規程と法令遵守を求められる」(225頁)、「自信度が低い」(228頁)、「学ばず勉強しない」(232頁)、「自分で考えない」(234頁)と記す。誠に耳の痛い指摘ではあるが、これらの指摘が当てはまる教員が多いと著者は言う。著者は、その原因の一つが「教員の多忙化」にあるとして、2015年に国立4教育大学のHATO調査の結果や、2014年9月の『日本教育新聞』に掲載された公立中学校教員の1日の仕事振りなどの例を示す(229~231頁)。

 さて、教員は、行政からの「あれをせよ、これはするな」の多様な命令に縛られ、多忙な中で自分自身を見失ってしまいがちだが、「現状に満足する」教員が多い。それは、この格差社会の中で、公務員たる教員の給料が比較的高いことに原因があるのではないかと著者は見る(242~243頁)。だが、著者は、「教員の個人的な満足が子どもたちの満足度を高めることになるのか」(243頁)と疑問を呈す。

 このような教員の状況下において、本書最終部で著者は文科省に対して「極めてささやかな注文」(255頁)として、一つの提案をする。「『教員を徹底して自由にすること。』このことが新自由主義的な考え方を変えることなく経済成政策の下僕になっている感のある文科省に対するたったひとつの注文であり、教員と学校を活性化するための唯一の提案である」(256頁)。

 ここで言う「自由」の意味は重い。

〈評・高木 哲也〉 七つ森書館・2017年・2800円+税 (17年12月28日)

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