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『日本軍兵士ーアジア・太平洋戦争の現実』 吉田 裕 著

 これまで戦争に関する書籍は多数出版されてきたが、本書は以下の3つの問題意識によって書かれた異色の書である。3つの問題意識とは、「戦後歴史学を問い直すこと、『兵士の目線』で『兵士の立ち位置』から戦場をとらえ直してみること、そして、『帝国陸海軍』の軍事的特性との関連を明らかにすること」(ⅰ~ⅱ頁)である。本欄では、本書が「兵士の目線、立ち位置」を重視している点を強調したい。「『兵士の目線』を重視し、『死の現場』に焦点をあわせて戦場の現実を明らかにする方法」(ⅴ頁)をとる著者は、「その際、従来ほとんど取り上げられることがなかった兵士の身体をめぐる諸問題、すなわち、被服、糧食、体格の問題、メンタルな面も含めた健康や疾病の問題にも目を配りたい」(ⅴ頁)とする。

 以下に、本書に記された「戦場の現実」を幾つか示す。

戦病死…「戦病死者が全戦没者のなかに占める割合は、一九四四年以降は実に七三・五%にもなる」(30頁)

餓死…「アジア・太平洋戦争では数多くの餓死者が発生している」(31頁)、「戦死ではなく、餓死を中心にした戦病死が兵士の死の最大の原因であったことは間違いないだろう」(41頁)

再発マラリア…「(復員したある兵士は)『今年で復員してより三十五年、今年の一月十一日より十六日まで、またマラリアが出たが、熱は少なく、ただ足のだるさが強くあったのみで終わった。俺の脳天は罹患より今日まで、毎日毎日が鬱陶しい、一日でよいから俺の脳天に日本晴れをくれ』と書いている」(202頁)

齲歯…「歯科治療は、日本軍の戦地医療のなかでも最も遅れた分野に属していた」(9頁)

 戦争とは殺し合いである。その殺し合いの現場で生きる兵士たちのリアルな実態を明らかにすることで、戦争の悲惨さが浮かび上がる。「9条改憲」が政府によって叫ばれるいま、私たちは「戦争とは何か」をリアルに知らなくてはならない。本書は、そのために極めて有益である。ホンモノの戦争とは、決して「ゲーム」ではないのだ。

 〈評・高木 哲也〉 中公新書・2017年・820円+税 (18年2月1日)

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