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希望学 玄田 有史 編著

              

希望

 「希望学」という学問がある。本書の編著者である玄田有史ら東京大学社会学研究所員が2005年度から始めた新しい学問だ。希望学は次の三つの問いへの答えを追求する。

①社会において個人が形成する希望とはそもそも何なのか。

②社会が個人の持つ希望にどのような影響を及ぼすか。

③個人の形成する希望が社会状況をどのように規定するのか。

 このように、希望学とは、個人が持つ希望と社会の関係を追求する学問だ。岩手県釜石市での地域調査等をもとに『希望学』全4巻(東京大学出版会、2009年)が刊行されたが、本書は『希望学』全4巻の道標だろう。

 評者は『富高教情報』2013年10月25日号で玄田の『希望のつくり方』(岩波新書、2010年)を紹介し、「希望とは、自らの行動によって、現状を変えようとするときに表れるもの」という希望学の立ち位置を紹介した。それに加えて本書で紹介したい点は、「挫折経験がある人ほど希望を持ちやすい」(49頁)という指摘だ。更に、「挫折とは、過去が今の自分にどのように影響しているのか、自分はどうして今の自分になったのか、という現在の自分を位置づけ、評価するための道具の一つなのだ」(141頁)という定義も興味深い。また、「希望もやはり単純な未来ではなく、個々人の現状の評価に依存するものである。なぜなら希望とは、それぞれが何を問題だと考え、何をどのように改善したいと思うのか、現在の不全感の解消や願望の実現を未来に求めたものであり、(現在の自分が)将来どうなるかに関する予測という側面を持つからである」(143頁)という指摘にも同感する。

 私たちを取り巻く状況は依然として厳しい。だからこそ、過去を真摯に見つめ、現在を真剣に評価したい。希望はそこから表れるのだ。

 〈評・高木 哲也〉

中公新書ラクレ・二〇〇六年・七〇〇円+税

   (14年1月25日)

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