まず、集団的自衛権に関する従来の政府見解を、浦田は「集団的自衛権を日本は国際法上保有しているが、憲法上行使できない」(11頁)としていると説く。それは、「憲法九条の存在が政府の集団的自衛権論を強く規定している」(12頁)からだ。
また、前田は1954年の自衛隊法採択の際に参議院でなされた付帯決議を紹介する。即ち、「本院は、自衛隊の創設に際し、現行憲法の条章と、わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し、海外出動はこれを行わないことを、茲(ここ)に更(あらた)めて確認する」(22頁)。自衛隊創設時の当然の考え方だろう。
しかし、いま、安倍政権は従来の精神を破ろうとしている。この状況を半田は次のように記す。「この法律(=国家安全保障基本法、引用者)の特徴は、憲法で禁じた集団的自衛権の行使を法律によって可能にするからくりが潜んでいることです。自民党が作成した法案概要をみると、第一〇条は集団的自衛権の行使を認めています。第一一条は国連安保理決議があれば、海外における武力行使を認める内容となっています」(41頁)。非常に危険だ。
さて、本書は最終章で阪田雅裕・元内閣法制局長官との2007年当時のインタビューを掲載している。これが極めて秀逸。
阪田は、「裁判所は抽象的な違憲立法審査はしない」と述べた上で、「憲法については、最高の行政機関である内閣が統一的な解釈をしなければならない。その内閣の補佐機関であり、法律専門家集団である内閣法制局は、否応なくそういう役回りを担わされているのです」(53頁)と語る。それで分かった、だからこそ、真っ当な阪田は安倍によって内閣法制局長を罷免されたのだ。本書によって目から鱗が落ちた思いである。
〈評・高木 哲也〉
岩波ブックレット・2013年・500円+税 (14年3月10日)