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社会力を育てるー新しい「学び」の構想 門脇 厚司 著

社会力を育てる 現在、安倍首相は教育に異常な関心を示し、「教育再生」を進めている。その一つが、子ども達の「グローバル化に対応する能力」の伸張だ。しかし、これは、一部のエリートだけを対象とする、経済界に有為な「人材」づくりの一環に過ぎない。

 著者は、「人を育てる教育が経済の僕(しもべ)であっていいのだろうか」(171頁)と嘆く。そして、「(いまは)産業社会に役立つ教育から脱却し、個々の人びとの善き生と社会の健全な発展を両立させる教育へと一刻も早く、教育の目標を転換しなければならない時期である」(同頁)と主張し、そこに必要な力が「社会力」であると説く。

 それでは、「社会力」とは何か。それは、現在の社会にうまく「適応」できることを意味する「社会性」ではない。著者は、「(現在の社会は)様々な難問を抱えて苦悩し、新しい方向への舵取りを余儀なくされている」(69頁)とした上で、「私たちに求められているのは、社会に適応する能力を超えた、社会を変えていく能力すなわち社会力である」(同頁)と説く。そして、このような力は、戦後の新教育が育てようとした新しい学力、すなわち、「「事態のなかに入り込んで事態を変革する学力」や「よき社会の建設のための学力」」(158頁)とほとんど同じだと言う。この厳しい社会に「自らを合わせる」のではなく、「社会自体を変える志」を基盤にした力が社会力なのである。

 現在進められている安倍「教育再生」の狙いは、正に、産業社会の発展に役立つ「人材」を探し、その能力を伸ばすことだ。しかし、これは、一部のエリートのみを伸ばす「能力主義」に過ぎない。それではいけないのだ。間違った社会を変えようとする志と教育設計こそが、いま、極めて必要な時なのである。 

 〈評・高木 哲也〉

岩波新書・2010年・800円+税   (14年6月10日)

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