飯館村を訪れて
飯館村に入ると、草ぼうぼう。「美しい自然のはずが・・・」と愕然とする。
除染作業を行っている様子を目にします。しかし、国・環境省が進めている除染が、飯館村で行き詰っています。
「除染」とは、環境省によれば放出された放射性物質を取り除くこと。具体的な取り組みとして、放射性物質が拡散した表土や樹木などを集めて捨てる。個人宅では家を高圧放水で洗い流す。などです。多くが人の手で地道に行われています。
広大すぎる除染対象区域。当初の計画どおりにはなかなかすすんでいない現状。
広大な農地の表土剥ぎ取りなどから生じる土壌などを置くために必要な仮置場。フレコンバック(廃棄物を入れる袋)の耐用強度への不安。処理をする労働者の健康被害。・・・様々な問題をかかえています。
鴫原さんは、「除染して帰村へ」という今の体制に対して、様々な観点から問題点を指摘しています。
帰村の当初目標2年は願望の域。山林に囲まれた広範な地域の除染がいつまで続くのか。しかもその山林除染=自然破壊 自然環境の復活にも膨大な時間が必要。
帰村に対する高齢者層と若年層での意識の差。(帰りたい気持ちは皆同じ。安心した子育てへの不安。田畑も作れず、ただ村に住むだけでは変える意味はない。代替え地への移住を求めるべきとの意見もあり。)
今後、警戒区域の見直しなどで、新たに立ち入り制限区域になるのでは?という不安。既に汚れた地域だから、近隣が廃棄物置き場にされるのでは?という不安。
帰宅困難区域である長泥地区へ。
2012年7月17日の見直し後の避難指示区域の地図
長泥は放射線量が高く、帰宅困難区域に指定されている
バリケードを通過
長泥十字路に設置してあるモニタリングポスト
長泥十字路における放射線量の記録
飯館村に向かう峠から
放射能は、むこう(原発)からこちら(飯館村)に向かって流れてきたと説明を受けました。ちなみに次の写真は、原発事故前の長泥地区の美しかった桜です。
鴫原さんが長泥で実験的に作っている田んぼです。
もちろん出荷されることのない米です。
しかし、今後何十年もデータを蓄積し、後世に活かすためつくっているとのこと。
鴫原さん(飯館村長泥行政区区長)は、原発被災者として次のように決意しておられます。
「現在の科学力で、原発や放射能を制御できない事が明らかになった。この地に生活する上では、自分の寿命が尽きるまで、放射能と付き合っていかなくてはならない現実を受け止めざるを得ない。核の利用は、商業目的であれ、軍事目的であれ、一度事故が起きれば、賛成・反対の立場にも関係なく全てが被害を受ける。こんな事は二度とあってはならない。起こさせないという気持ちで、今後も脱原発、反核の意識を持ち続けていきたい。」